個人M&A失敗の要因③/自社・顧客・競合の実態を未把握

query_builder 2021/04/28
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M&A

 M&Aでは、小規模なものから大規模なものまで、実は多くの買収企業の社長が「M&Aは失敗した」と感じているのが現状です。


 失敗の原因は様々ですが、本章では特に、個人M&Aでの中小企業の買収で失敗する要因と思われる内容について、7回に分けてご紹介します。  


 個人M&A失敗要因の2つめは、自社の問題点や強みを把握していないこと、顧客のニーズや競合の状況を把握していないことです。

 いわゆる3C(Company:自社、Customer:顧客、Competitor:競合)分析ができていないケースです。  



 中小企業の中で最も会社を知っている、会社全体を把握しているのは、社長でなければならず、実際に社長であることがほとんどです。


 社長以外の従業員は、個々の業務の範囲でしか業務を把握していません。

 しかし実際に多くの社長は、自社の問題点や強みを理解できていません。


 例えば、不要な資料を慣習的に作成していたり、データ化できるものを紙媒体で管理するなど、多くの無駄な作業が存在しています。


 しかし従業員は、これらの業務を忠実に実施することが正しいと思い込んでいるため、これらが問題であると気づく従業員は少ないのです。


 そのため、社長自らがこの非生産性業務に気づき、それらの改善に取り組まなければなりません。


 不要な資料は排除して簡素化する、数値は紙ではなくデータで管理して作業を効率化して加工しやすくする、というような、仕事の効率や生産性向上、品質向上につながる抜本的改善は、社長の重要な仕事なのです。


 また、顧客のニーズの把握も十分とは言えません。

 長年経営を続けている中小企業では、一定の固定客が存在しています。


 しかし、社長自身が、顧客がなぜ他社ではなく自社の商品を選んでいるのかを十分に理解できていません。

 つまり、自社の強みを理解していないのです。


 また、固定客のみに対して自社の既存商品だけを販売しているため、新たな顧客のニーズも把握できていません。


 このように自社の強みと顧客のニーズを知らずに、既存商品を固定客だけに販売しているため、新規顧客を獲得するのが困難な状況なのです。

 中小企業では新商品の開発を行われない企業も多いため、売上が減少傾向となってしまうのです。


 さらに、競合他社の状況把握も不十分です。

 競合他社の商品に関する知識は持っているのですが、何が当社より優れていて、何が劣っているのかを詳細に分析できていません。


 また、競合他社が強力な新商品を開発したり、新規参入で新たな競合が発生したりして、一部の顧客が当社から他社に流出することがあっても、顧客管理が十分ではないため、なぜ顧客が減少しているのか、さらには年々どの程度顧客が流出しているのかも把握できていません。


 このように、多くの中小企業は、3Cの把握が十分ではないのですが、それでも業務のルーチンがある程度決まっていて、商品を買ってくれる固定客がいれば、事業はある程度回っていきます。


 しかしこれはあくまで、市場環境が安定し、変化が少ない場合に限ります。

 昨今はネット社会で、各企業のホームページやネット通販、SNS等で、膨大かつ多種多様な情報が簡単に入手できます。


 つまり広告などにコストがかからず、顧客の選択肢は大幅に広がり、小さな企業や一個人でも、良い製品を適性価格で提供できれば強力なライバルになります。


 そのため、顧客のニーズを把握すること、競合他社を知ること、そしてその中でいかに自社の差別化(強み)を図っていくかを吟味し、機動的に行動していかなければ、事業を継続していくのは難しくなってきています。


 例えば、新型コロナウィルスにより、飲食業やサービス業を始めとして様々な業種の需要が激減し、多くの企業が廃業に追い込まれました。

 そのような中、業績を回復させている企業もあります。



 一つ事例を紹介します。

 某寿司屋の事例ですが、「新鮮かつ高品質なネタ」にこだわったプロの職人の寿司屋で、あまり繁盛していない商店街の一角にあり、一定の固定客で成り立っていました。


 売上は大きくはないのですが、しっかりと黒字をたたき出していました。

 そのような中、新型コロナウィルスにより顧客が一気に途絶えました。

 当社の固定客は年配者が多かったため、今後需要が戻ったとしても、以前のような売上を獲得することは難しい状況であると思われました。


 そこで、需要が回復するまで一旦店を閉めて需要が戻り次第再開することにして、再開に向けて新たな戦略を練りました。

 そして従来のまま事業を続けても、この大きな市場変化に対応できないと判断し、ターゲットを拡大させて、従来の「新鮮かつ高品質のネタ」という軸を維持したまま、「寿司屋」という枠を超えて新たなターゲット顧客のニーズに応えていく戦略を打ち出しました。


 新たな戦略とは、自社の強み・経営資源を活かせる、かつ今後需要が期待できる新たなターゲット顧客を設定すること、そして新たなターゲットに向けた価値を向上させて、価値を浸透させることです。


 既存顧客である年配者は、コロナ禍が収まっても顧客は完全に戻ることは期待できません。


 また、同社の立地は都会から離れているため、通勤のビジネス層を取り込むことができません。

 そのため周辺住民の中でターゲット顧客を再選定する必要がありますが、高級路線でいくと、ターゲットとなる顧客が近隣にはいません。


 そこで、需要が見込める、その地域で一定の人数がいる「若い女性」という新たなターゲットを設定し、それらに合わせたメニューを開発しました。

 具体的にはインスタ栄えする料理であり、新鮮な地元野菜を使ったサラダ類や、新鮮な果物を使ったデザート類の開発、そして女性でも飲みやすい各種日本酒などをメニューに加えるなどです。

 そしてフェイスブックやインスタグラムなど、SNSを徹底的に活用して、これら新たな料理(価値)を発信していきました。


 もちろん店内は、レイアウトの変更や空気清浄機・透明パーティションの設置をするなど、徹底したコロナ対策を講じました。 そして数か月後、需要が戻ってきたところで店を再開しました。


 すると、当初は既存顧客が一部戻ってきただけだったのですが、次第にSNSを見て女性客が来店するようになりました。


 元々本格的寿司屋であり、ネタと味には定評があるため、多くの新規顧客がリピートし、口コミで新たな顧客を連れてきてくれました。

 そして再開して2か月後には、黒字に戻すことができたのです。


 当店の周囲の飲食店は、業績悪化で店を閉めるところ多かったのですが、そのような中で当社は、元々の強みを維持しつつ、新たなターゲットを見出し、その顧客向けのメニュー開発で新たな価値を見出しました。


 そしてその価値を徹底して発信・浸透させていくことで、早期に新たな固定客を獲得することができたのです。


 このように、市場の変化に対応するには、徹底した3C分析で市場環境の変化に対応することが重要なのです。

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