個人M&A失敗の要因①/事業の中身の未把握

query_builder 2021/04/20
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M&A

 M&Aでは、小規模なものから大規模なものまで、実は多くの買収企業の社長が「M&Aは失敗した」と感じているのが現状です。

 失敗の原因は様々ですが、本章では特に、個人M&Aでの中小企業の買収で失敗する要因と思われる内容について、7回に分けてご紹介します。


 個人M&A失敗要因の1つめは、売手企業の事業の内容(内部環境)を十分に把握せずに買収してしまうことです。  


 中小企業には色々な特性があり、各企業は個性的で、内部環境はそれぞれ異なっています。

 しかし現在多くのM&Aでは、規模の大きい企業も含めて、売手企業の個別の事情を把握することなく買収しているのが現状です。


 一般的なM&Aでは、基本合意締結後、DD(デューデリジェンス)を行い、その後に正式な最終契約書の締結を行います。

 DDとは、簡単に言うと、企業の価値やリスクなどを調査して評価することで、主に法務DD、財務DD、ビジネスDDがあります。


 法務DDとは、法的権利の有効性の評価や、係争事件の有無、偶発債務等の潜在的な法務リスクの有無をチェックすることです。

 例えば、売手企業の得意先との契約で、M&A取引などによって会社の実質的所有者である株主の構成が大きく変更になった場合に、契約を解除することができる条項があったとします。

 その場合、買収後にその得意先との取引が停止になるため、企業価値が大きく減少してしまいます。

 このような法的リスクがないかをチェックするのです。

 法務DDは、主に弁護士が実施します。


 財務DDは、売掛金や在庫、土地・建物等の資産の再評価、および正常収益力の再評価を行い、簿価ベースのBS(貸借対照表)、PL(損益計算書)を実態ベースに作り直して、潜在的な財務リスクの有無をチェックすることです。

 例えば、簿価ベースのBSで、売掛金が一千万円ある内の三百万円が、すでに倒産した得意先のものであれば、この三百万円はいわゆる「不良債権」であり、回収の見込みはありません。

 そのため、簿価の一千万円から不良債権分三百万円を差し引いて、実態の七百万円に修正するのです。

 また棚卸資産の場合、販売見込みのない在庫は「死蔵在庫」として簿価から差し引いて実際に修正します。

 このように中小企業の場合、特にBSは、簿価と実態が大きくかけ離れているケースが珍しくないため、財務DDで修正するのです。

 この財務DDは、会計士や税理士が担当します。


 そしてビジネスDDとは、事業の中身を分析するものです。

 例えば、経営や組織、営業・販売や、工場・店舗など、事業の各機能の業務で問題がないか、そして強みがどこにあるかを確認して、事業面のリスクや成長の可能性を探ることです。

 ただし、このビジネスDDは、M&Aではほとんど実施されないか、或いは買手の従業員、つまりビジネスDD未経験者が実施しています。


 つまり、法務DDや財務DDは各々の専門家が実施する一方で、ビジネスDDは、実施しないか、実施しても経営の素人が実施しているのです。

 そのため、M&Aで企業を買収する際に、業務の中身を把握せずに購入しているのです。


 さらに個人M&Aのような小規模なものは、ビジネスDDだけでなく法務DDや財務DDも行われないケースが多いのが実情です。


 我々は日常の生活で買物をする時に、百円の品物でも、しっかりと中身を把握した上で購入します。中身を知らずに購入することは、正月の福袋やガチャガチャくらいです。


 しかしM&Aの世界では、私たちが日常生活で当然に行っている「中身を吟味して判断する」ことを実施していません。

 数百万円から数億、あるいはそれ以上の金額を支払う買物であるのに、事業の中身を把握せずに購入しているのです。


 特に個人M&Aで対象となる中小企業は、同じ業種で同種の製品を作っていても、事業の中身は大きく異なっています。


 例えば、経営手法や組織体制、戦略や戦術、管理体制や業務フロー、各作業方法、そして従業員のスキルや商品自体の特徴も、各企業によってそれぞれです。

 そのような状況でも、事業の現状を十分に把握して吟味することなく、買収しているのです。


 そのため、買い取ってから様々な問題が発生し、結局対処しきれず「M&Aは失敗だった」と後悔する社長が後を絶たないのです。


 なぜこのようなことが起きているのでしょうか。


 ビジネスDDは、経営コンサルティングの高いスキルが要求されるため、コンサルタントのような専門家の中でも実施できる人材がほとんどいないからです。

 そのため、ビジネスDD未経験者である新社長自身が、ノウハウがない中でビジネスDDを一通り実施することは非常に難しいのが現状なのです。


 その結果、ビジネスDDを行わず、事業の中身を理解せずに買収するため、買収後に想定外の様々な問題点が発生し、買収企業の経営がうまくいかないのです。


 中小企業を経営するには、事業を俯瞰的に捉えた上で、各部門の詳細についてもある程度把握することが求められます。

 そして会社の問題点を把握して改善に取り組むこと、また会社の強みを理解して成長戦略を描くことが重要です。

 そしてこれらを行うには、ビジネスDDなどで調査を行って現状把握する必要があるのです。

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