M&Aのビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD)/法務DD・財務DDは「専門家」が実施、ビジネスDDは「未経験者」が実施するのはなぜ?

query_builder 2020/11/09
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M&A

法務DD・財務DDは「専門家」、ビジネスDDは「未経験者」が実施している

 近年M&AでビジネスDDが重要視されてきています。その理由は、M&Aで多くの買い手企業の社長が「失敗した」と感じているという実態があり、それがビジネスDDを実施しない、あるいはビジネスDDの品質が不十分であることが大きな要因となっているからです。


 M&Aで行うデューデリジェンス(以下,DD)は、主に法務DD、財務DD、ビジネスDDの3つの種類があります。

 法務DDは、法的権利の有効性の評価や、係争事件の有無、偶発債務等の潜在的な法務リスクの有無のチェックを行うことで、弁護士が実施します。

 財務DDは、売掛金や在庫、土地・建物等の資産を再評価し、簿価ベースの決算書を実態ベースに作り直して、潜在的な財務リスクの有無のチェックを行うことで、会計士・税理士が担当します。 このように法務DDや財務DDは、その道の「専門家」が実施しています。


 一方でビジネスDDというのは事業の「中身」をチェックするもので、具体的には、経営や組織、営業・販売や製造など、事業の各機能で問題がないか、そして強みがどこにあるかを確認して、事業面のリスクや成長の可能性を探ります。

 ただしビジネスDDは、他のDDのように経営の専門家が実施している訳ではなく、経営やビジネスDDのノウハウを持っていない未経験者である買い手側の一般社員の方が行っています。そのため、実施されるビジネスDDのクオリティが下がってしまうのです。具体的には、事業の個々の問題を抽出できておらず、買収後のPMIで事業の中身のリスクを回避できていないため、買収側にとって有意義なものになりません。

 また、ビジネスDDを実施せずに買収するケースも非常に多いのが現状です。


 つまり買い手企業は、売り手企業の事業の中身(事業内容の現状・問題点・強み)を理解しないまま購入しているのが現状なのです。そのため、買収後に様々な問題が発覚したり、シナジー効果が発揮できない状況が起きてしまうのです。


買物は「中身」を吟味して決定するのが当たり前

 我々は日常生活の中でさまざまなモノを購入していますが、その際にはその中身を検討した上で、購入するものを決定しています。

 例えばプライベートでは、日用品や文具では使い勝手などの機能性、衣服ではデザインや色合い、そして試着をして着心地などを確認します。また、家電やAV機器では、その機能性や操作性、大きさやデザインなどについて検討します。さらに、一生に1度購入するかどうかという住宅などは、自身や家族の生活スタイルや将来設計まで踏まえて検討します。

 これはビジネスの世界でも同様で、部品や材料、商品の仕入についても、様々な選択肢からそれらの中身を吟味して購入品を決定しています。特にビジネスでは感情面で選択することは稀で、合理的に判断して購入を決定するため、中身をよりシビアに判断します。   このように、プライベートでもビジネスでも、中身を吟味して購入の是非を決定するのは当然のことなのであり、中身(機能)をよく理解せずに購入することは通常あり得ません。


ビジネスDD未実施の企業買収は、「中身」を理解せずに購入すること

 しかしM&Aの世界では、日常生活で当然に行っていることを実施できていません。法務DDや財務DDなど、法的リスクや財務・税務的リスクを回避するための調査を行っていながら、肝心な事業の中身に関するリスクについては何も実施していないのです。


 企業というのは、同じ業種で同種の製品を作っていても、経営や業務の中身はまったく異なります。例えば、経営手法や組織体制、戦略や戦術、管理体制や業務フロー、各作業方法、そして社員のスキルや商品自体の特徴も、各企業によってそれぞれ違っています。特に中小企業の場合は、大企業と異なり、体制やしくみが曖昧で、個々の業務や作業が属人的になる傾向があります。

 そのため、同種の製品でも事業の中身は異なり、様々な問題を抱えるケースが多く、さらにそれらの問題が顕在化しておらず、社長や社員でさえも自社の問題点が何なのかを理解していない事が多いのです。したがって、ビジネスDDで、専門家が各機能や各業務についてしっかりと問題点を抽出しておかなければ、買収後のPMIもうまく実施できません。また、売り手企業を、統合せず引き続き単独で事業を運営する場合でも、新社長は業務の中身を詳細に理解できないため、社員との信頼関係が構築できず、うまくコントロールができないのです。


 このように、売り手企業の買収後に経営統合する場合でも、統合せずに単独で運営する場合でも、効率的に運営して効果を上げるためには、売り手企業の個別の問題点を、買収後に改善しなければならないのです。

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