中小企業の経営コンサル・事業再生コンサル/コロナ禍(需要の急激な激減)での経営の手法①

query_builder 2020/10/12
ブログ
事業再生

コロナ禍で業績を改善するには「やり方」がある

 コロナ禍により、飲食業やサービス業を始めとして様々な業種の需要が急激に激減しました。国や自治体が様々な補助金や保証で支援をしていますが、それでも多くの企業が廃業に追い込まれ、継続できていても大幅な収益悪化の状況を打開できていません。

 そのような中、業績を回復させている企業もあります。例えば、コロナ禍以前の業務内容をそのまま継続して自然に回復する企業ですが、これは元々強力な強みと多くの顧客客が存在する場合であるため、多くの企業には当てはまりません。しかしそれ以外に、この需要激減の市場変化に対応して収益を改善した企業もあります。これは決して「トライ&エラー」というような、たまたま実施した施策が当たったというものではなく、緻密に計算した上で仮説を立て、改善を果たしたのもです。つまり、コロナ禍のような市場が激減する中でも、正しい「やり方」をすれば業績は改善できるのです。

 そこで、今回と次回の2つの会社を例に出して、コロナ禍のような市場が急激に低下した際の対応方法を紐解いていきます。


寿司屋の事例

 某寿司屋の事例です。「新鮮かつ高品質なネタ」にこだわったプロの職人の寿司屋で、あまり繁盛していない商店街の一角にあり、一定の固定客で成り立っていました。売上はさほど大きくはないのですが、営業利益は10%程度をたたき出していました。

 そんな中、2020年2月にコロナが発生し、顧客が一気に途絶えました。当初は一時的なものと考え、仕入とメニューを絞って対応していましたが、3月に入ると状況は更に悪化し、状況は長期化しそうな気配でした。そして商店街の他の飲食店は、弁当などを販売して対応していました。しかし当社は、コロナの影響が収まるまで思い切って店を占めました。これは、弁当などで対応していても十分な売上は期待できず、弁当を製造するための人件費、その他の経費でさらにキャッシュアウトが大きくなるからです。いつ再開できるかわからない中で、社長自身も不安を抱えていましたが、この休みの間に、再開に向けて、やるべきことを決定しました。


 再開に向けて取り組んだこと、まずはコロナ対策です。カウンターの椅子を減らし、仕切りを設置し、徹底した洗浄とクリンリネスを徹底しました。

 続いて、新メニューの開発です。コロナの影響が過ぎても、従来の顧客が100%戻るとは限りません。つまり、現在のターゲット顧客である「固定客」だけでは、コロナ前の収益まで改善は見込めないのです。そのため、ターゲットを広げて、より多くの顧客に受け入れられるようにしました。具体的には「(日本酒・寿司好きの)若い女性」および「宅配」です。

 若い女性については、若い女性が好みそうな、インスタ栄えする野菜サラダを開発したり、女性でも飲みやすい日本酒を導入したり、その他おつまみやスイーツなど、女性向けのサイドメニューも開発しました。

 また宅配は、宅配専用に、当社の強みを活かした、やや高級な寿司弁当の宅配メニューを開発しました。当社は以前に宅配を実施していたのですが、人手が足りず、宅配料金を徴収していなかったため採算が合わず、停止していました。しかしコロナ禍で需要は拡大するのは確実であったため、再開することにしました。

 これらはもちろん、従来の固定客を維持するために、「新鮮かつ高品質なネタ」にこだわった、プロの職人の寿司屋のコンセプトは維持したままです。

 その他、Facebookやインスタ、Twitterなど、SNSで、仕入や料理の状況の発信を強化することで、広く当社のブランドを広めることにしました。

 このような準備に追われる中、次第にコロナが終息していき、市場の空気感も変わっていきました。具体的には、自宅待機により多くの店が閉店せざるを得ない状況から、店舗を再開して経済を回していくことを優先するようになったのです。消費者も、自宅待機のストレスから解放されたいという意見が、報道などで多く見られるようになりました。


 そこで、6月1日から店を再開することにしました。ただし、まずは週に4日に留めました。再開に向けては、地域に再開を伝えるためのポスティングを行い、ポスティングには新たなメニューも追記しました。さらに固定客には丁寧に電話で再開の旨連絡をしました。

 すると、6月1日から固定客が来店してくれました。そしてしばらくすると、SNSを見たという女性客が現れ、彼女達がリピートし、新たな友人を連れてきてくれました。

 さらに宅配ですが、当初宅配サービス2社と打ち合わせをしましたが、宅配料金が高価であり、当店のメニューでは他の店より価格が高いため、宅配サービスに依頼しても需要は極めて少ないと判断しました。そこで、パートを使って自社で宅配を行うことにして、宅配料を1回500円徴収することにました。コロナ禍以前では、消費者は宅配料金の上乗せに抵抗がありましたが、ここにきて宅配需要が増加し、宅配料金が別途かかるという認識が浸透してきているためです。

 こうして従来の固定客、そして新規顧客である女性客、宅配依頼が次第に増えて、売上は毎月少しずつ増加していきました。営業利益も少しずつ改善して、8月には黒字に転換しました。そこで10月からは週5日、6日に変更することにし、順調に収益状況は回復していきました。


総括

 業績改善のポイントは大きく3つあります。

 1つめは、「メリハリをつけた迅速な経営判断」です。

 コロナ禍により、仕入と廃棄のコストを削減、キャッシュアウトを削減するため、まずは仕入とメニューを絞りました。しかしこれはあくまで短期的な施策であり、「メニューを絞る」ということは、「企業価値が下がる」ということです。企業価値が下がった状態で中長期的に事業を運営しても、当然うまくいきません。そのため、長期化するとわかった時点で、需要が回復するまで思い切って店舗を閉めました。多くの店舗では、コスト削減のためメニューを絞ったまま事業を継続してしまっているのですが、これが大きな経営判断ミスであり、これでは企業価値は下がり、固定客も戻ってこなくなるのです。

 また、他店のほとんどが弁当を提供する中、当店はそれに追従しませんでした。なぜなら、弁当ではコスト高でさらなる収益が圧迫するという独自判断があったためです。そして需要を回復させてから、改めて店を再開したのです。多くの店舗が、他と追随するかのうように、安易に弁当を始めました。しかし、近くのスーパーやコンビニで、安くて美味しい弁当や総菜が多く売られているのです。しかも、外出できない中で、弁当の需要は高まるとは考えにくいはずです。他店に追随するのではなく、しっかりと3C分析を行った上で、当店で打ち出すべき独自の戦略を打ち出すことが重要なのです。

 その他、再開のタイミングは、市場の「空気感」です。市場の大半が「再び店で食事しよう」という空気になったら再開すればいいのです。このように、市場の状況に合わせて「閉める」「再開する」を迅速に判断することが大切です。


 2つめは、「『自社の強みを活かせる』『需要が期待できる』『新たなターゲット顧客』の設定、および価値向上と価値浸透」です。

 経営やブランディングのセオリーは「ターゲット顧客を絞る」ことです。この手法はセオリーの真逆の手法ではありますが、こういう緊急事態でセオリー通りにやってもうまくいきません。需要が急激に減少し、長期的に回復するのが難しいということは、今までのターゲット顧客だけでは従来どおりの収益を改善することはできないことを意味します。そうなると、人材や家賃、設備などの従来の固定費を維持することはできません。そのため、市場に合わせた柔軟な思考と対応力が必要になります。

 ただし、闇雲にターゲットを設定してはうまくいきません。あくまで、「自社の強みを活かせる」「需要が見込める」という前提での、「新たなターゲット」を見出すのです。今回は、需要が見込める「若い女性」と、需要が急拡大する「宅配」を新たなターゲットに設定し、それらに合わせたメニューを開発しました。

 このように、新たなターゲットを設定し、メニューを開発することで、価値を高めていったのですが、後はその価値を「浸透」させることが必要になります。当社の場合、再開時に個別に固定客に連絡をしただけでなく、新たな価値をポスティングで知らしめ、さらにSNSで価値浸透を図りました。それにより、早期で固定客が戻り、新たな女性客も獲得することができたのです。


 そして3つめは、「コンセプトの維持」です。

 コンセプトは、会社経営の核となるものであり、拡大のための土台になるものです。この核を維持しないような拡大は、土台が緩むことになるため、一時的に改善しても必ず衰退します。

 具体的には、基板となる事業の価値が下がるため、基板事業の固定客離れが起き、新規開拓もできません。そのため基板事業の売上は衰退することが想定されます。

 また、基板となる強みを活かせてない新規事業では、競争の激しい中、SNSで新規顧客を取り込んでもリピートしてもらえません。リピートしてもらわなければ、永久的に新規顧客を獲得しなければならないビジネスモデルとなるため、当然いつかは衰退するのです。

 当社の場合、このコロナ禍の中で、ターゲットを広げて様々なメニューを開発しました。そしてそれらを浸透させるための施策を講じました。これらメニュー開発、そしてSNSによる浸透活動のベースになるのが、当社のコンセプトである「新鮮かつ高品質なネタ」なのです。このコンセプトが維持されたため、新規顧客である女性客を獲得した後も、それら女性客がリピートされ、さらに口コミで広がっていき、順調に売上を回復することができたのです。

NEW

  • 事業再生の事業デューデリジェンス(事業DD)/事業DDのポイント

    query_builder 2020/10/20
  • 中小企業の経営コンサル・事業再生コンサル/コロナ禍(需要の急激な激減)での経営の手法②

    query_builder 2020/10/16
  • 中小企業の経営コンサル・事業再生コンサル/コロナ禍(需要の急激な激減)での経営の手法①

    query_builder 2020/10/12
  • 中小企業の経営コンサル・事業再生コンサル/なぜ事業計画書が形骸化するのか

    query_builder 2020/10/11
  • 中小企業のM&A(スモールM&A)/事業承継の種類とM&Aのメリット

    query_builder 2020/07/17

CATEGORY

ARCHIVE